このような状況の中で大きな社会形態の変化が起きてきた。 1947年バーデン等 (1956年ノーベル賞受賞)による半導体能動素子(トランジスター)の発明があり、それは社会構造まで変えてしまうほどの能力を内蔵していた。この素子で、超微細化、超高速化が達成されソフトウェアの発展と相伴って、今日の情報化社会の基盤が確立されていった。現在では地球的規模でネットワークが張り巡らされている。膨大な情報が国家間、各専門分野間の壁を一瞬にして通り抜ける。スマホの普及でお年寄りから未成年まで、情報端末を持ち歩く時代となった。 一個人の思いが即時に現実化する可能性を帯びる時代でもあり、それに反して国家間のシステマティックな関係処理は非常に困難な時代でもある。
別言すると、情報化の進展に伴い巨大化したメディアを通して一人一人の思想とか信仰がそのまま社会の表面を飾るようになってきた。同一思想の小数グループの意見も又形成されることは容易である。
2015年11月3日パリ市内3か所でテロが発生した。死亡者は130人、負傷者は350人と言われ世界中の視線が注がれた。 実行犯は9名。ベルギーやフランスの普通の若者達(内5人はフランス国籍を有する若者)であり、IS(Isramic State)過激派の指令に基づいているという報道がなされた。
更に重要なテロ事件が米国カリフォルニア州サンバーナデ-ノの福祉施設で発生した。 イスラム教信者の夫婦による銃乱射によるもので14名の死者と21名の負傷者がその犠牲者である。 イスラム教信者としての米国社会に対する苛立ちが顕著であったとも報じられている。インターネット上には、ISの元幹部スーリーなる人物の影響を伺わせる部分もある。 指摘されているように情報化社会は流動性の高い揺れ動き易い状態である。 必ずしもスーリー氏の存在が事件の解明に必要なのであろうか?過去に僅かな人数で、IS過激思想とは別個に少人数で起きたテロは、カナダ、オタワ連邦議会襲撃事件(2014年)ボストン爆破テロ事件である。
パリ事件の直後、第三次戦争の始まりではと言う囁きも聞こえたが、今はその様な言葉は聞かれない。
しかし何処でテロが起きてもおかしくない状況下にあり、人類が受けるテロによるストレスは益々増大するばかりである。
何故テロが頻発するのか。 テロのトリガーとして、資本主義社会究極の問題である経済格差。 更には宗教問題、即ち、キリスト生誕から2000年を迎えた宗教界の不安定性(これは同時にイスラム教の不安定要因にも結びつきうる)。 情報の広域化による民族問題等々による多くの苛々に世界は満ち溢れている。 これらは国家の国境を超えて存在する共通の問題である。
社会主義国家はその共産制を維持する為には中央集権的な権力が必要な社会である。しかし今は,「由らしむべし知らしむべからず」という言葉は通用しない時代である。 それほどスマホやコンピュータは国の体制に関わらず普及し尽くしている。
これは第一次世界大戦、第二次世界大戦の時の国家間のみの争いだった時とは様子が大きく異なっている。 第一次・第二次世界大戦時の戦争勃発原因は、国王、国家元首間の軋轢、国家間の領土的野心、世界恐慌に関する問題の解決手段等々が主な原因であった。
しかしテロ発生の原因は、国際間の出来事ではなく国内にその原因を内蔵し、今までの戦争とは大きく異なっている。 しかし戦争に似た状態が徐々に拡散して世界中に広がりつつある。 世界を混乱に落とし行く可能性で不安を禁じ得ない。
信じ難いことながら、ベルギーでのテロ事件の様に核物質が絡む様な場合は考えたくない事態である。